あたりまえの世界は
恋することで
終わりを告げる
今回、MAPPAの大塚社長からのオーダーはひとつ。「岡田さんが、本当に見たい映画を作ってください」と言うものでした。今はこれが流行っているとか、予算が集まらないとかは考えず、とにかく思いきりぶつけてみてくれと。 まず想像したのは、十代の頃の自分です。単館系の映画が好きだった私は、たまに東京へ足を運んでいました。電車に乗ってトンネルをくぐるたび、焦りの多い日々から遠ざかるような、少しずつ息がしやすくなっていくような……そして、映画館の椅子に座った時の解放感。いつもの私ではなく、ここにいるのが“本当の私”なのだという気持ち。 それを求めるなら、楽しく華やかな映画を好みそうなものですが、むしろ日々の屈託をきっちり描いた作品が好きでした。鮮烈な現実を生きる他者の心の揺れが、見ているこちらに伝播する。“本当の私”の詳細が、肉付けされていく。そんな映像が見たい、作りたいと思いました。
この『アリスとテレスのまぼろし工場』は、曖昧な世界でもがく少年少女達が、“恋心”を武器に運命と戦う物語です。 大枠でいってしまえばファンタジーになりますが、現実との地続き感を大事にしたいと思っています。そのためには、生命力を感じる映像が必要になってきます。本作の現場には、それぞれ素晴らしい才能があり、なおかつ情熱をもって挑戦を続けるスタッフが集まってくれました。現実の匂いがありながら、アニメーションでしか絶対に成立しない、奇妙な実感をもった映像になっていると思います。完成はまだ先になりますが、はやく皆様にお届けしたいです。
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今回、MAPPAの大塚社長からのオーダーはひとつ。
「岡田さんが、本当に見たい映画を作ってください」と言うものでした。
今はこれが流行っているとか、予算が集まらないとかは考えず、
とにかく思いきりぶつけてみてくれと。
まず想像したのは、十代の頃の自分です。
単館系の映画が好きだった私は、たまに東京へ足を運んでいました。
電車に乗ってトンネルをくぐるたび、焦りの多い日々から遠ざかるような、
少しずつ息がしやすくなっていくような……そして、
映画館の椅子に座った時の解放感。
いつもの私ではなく、ここにいるのが“本当の私”なのだという気持ち。
それを求めるなら、楽しく華やかな映画を好みそうなものですが、
むしろ日々の屈託をきっちり描いた作品が好きでした。
鮮烈な現実を生きる他者の心の揺れが、見ているこちらに伝播する。
“本当の私”の詳細が、肉付けされていく。
そんな映像が見たい、作りたいと思いました。
この『アリスとテレスのまぼろし工場』は、
曖昧な世界でもがく少年少女達が、
“恋心”を武器に運命と戦う物語です。
大枠でいってしまえばファンタジーになりますが、
現実との地続き感を大事にしたいと思っています。
そのためには、生命力を感じる映像が必要になってきます。
本作の現場には、それぞれ素晴らしい才能があり、
なおかつ情熱をもって挑戦を続けるスタッフが集まってくれました。
現実の匂いがありながら、アニメーションでしか絶対に成立しない、
奇妙な実感をもった映像になっていると思います。
完成はまだ先になりますが、はやく皆様にお届けしたいです。